セーフティー・はーと

2002年8月の記事一覧

第27号 HaZOpとWhat-if

高木伸夫   <システム安全研究所>
プロセス安全性評価手法にHAZOP(Hazard and Operability Study)とWhat-ifという手法があります。
両手法とも専門分野の異なる複数のメンバーからなるチームを編成して実施するのが一般的です。前者は、ガイドワード(無し、増加、減少、逆転など)とプロセスパラメータ(流量、圧力、温度、液レベルなど)を組み合わせることにより、例えば「流れが無い」、「流れが増える」、「逆流」といったプロセス異常を想定し、その原因となる機器故障、ヒューマンエラーなどをまず洗い出し、次に、その原因が発生した際のプロセスへの影響の検討、異常の発生防止ならびに影響の抑制にあたって講じられている安全策の妥当性を評価しようとするものです。一方、What-ifは、評価チームのメンバーそれぞれの気付きにより、「ポンプが故障で停まったら」、「バルブが閉まったら」、「不純物が混入したら」といった異常の引き金事象を想定し、それが発生した際のプロセスへの影響の検討、安全策の妥当性を評価する手法です。手法としてはHAZOPの方が系統的・網羅的でWhat-ifの方が簡単ですが、逆に簡単さゆえに上手く機能しないことがあります。時々、What-ifを上手く実施するにはどうしたらよいかという質問を受けます。色々な要因がありますが、対応策の1つとしてHAZOPの経験を積み、HAZOP的な思考方法をWhat-ifに持ち込むことにより効率的にHAZOPに近い効果をあげることができると思います。

第26号 最近の事故例に対して思うこと

小川輝繁   <横浜国立大学大学院 工学研究院>
「以前は管理職、特に課長級の人は現場のことは細かい点までよく熟知していたが、最近は管理職の現場の把握が乏しくなってきている」という話をよく聞きます。
確かに事故事例の中には、管理職が現場の仕事をよく把握していなかったことが原因の一つと考えられるようなものが少なからず見受けられます。このように、管理職が現場の隅々まで把握することが難しくなる背景は経営の合理化に伴い、管理職の守備範囲が広くなっていることや認証制度の普及拡大に伴って文書化が求められるためデスクワークが増大していることなどが挙げられます。
また、最近の事故例をみると組織の中枢部の目が行き届きにくい部分で起こっているものが多いと思われます。組織の中枢部が危険性を強く認識して関心をもっている部分ではほとんど事故は起こっていないと思われます。事故が起こった後、現場で行っている作業を事業所の幹部が初めて知ったというような例も見られます。周辺部の仕事を管理職がよく把握して適切な措置を講じることのできる仕組みを作っていくことが安全確保のために重要ではないかと考えている昨今です。