セーフティー・はーと
2003年4月の記事一覧
第42号 鉄腕アトムの時代
<科学警察研究所> 中村 順
平成14年に起こった爆発事故は新聞記事を整理してみると33件であった。それ以降も爆発事故の件数は減らないが、それ以上に気になるのが、同様の事故が繰り返し起こっていることである。
平成14年に起こった爆発事故は新聞記事を整理してみると33件であった。それ以降も爆発事故の件数は減らないが、それ以上に気になるのが、同様の事故が繰り返し起こっていることである。
携帯電話に使用されるマグネシウム合金枠の研磨作業における粉じん爆発事故、産業廃棄物にかかわる事故、たとえばスプレー缶の廃棄によるLPGガス漏洩爆発事故、放射線取扱事業所における混触爆発などである。 ここ数年繰り返し発生をみている事故や、あるいは重大な事故を起こし、注意が喚起されているにもかかわらず再び起こすなど深刻である。またかってそれ程多くなかった火薬工場における爆発事故も最近多くなったようにみえる。
こう書いているときにも鹿児島で近年最大の花火工場の爆発事故が発生した。
個々の事故原因はさまざまであるが、過去の貴重な事故事例を他山の石としないで対岸の火事としてしか見ないのだろうか。あるいは、法的に規制でもかけない限り安全対策に取り組む気がないのかと考えてしまう。
平成15年4月7日は鉄腕アトムの誕生日である。かって21世紀は鉄腕アトムの時代であり夢と希望に満ちているように見えた。ところが21世紀に入ってから起こっているこの世の中の出来事は、その希望がむなしいものであったように思える。絶望的なのだろうか。いや、かっての希望がむなしいものであれば、また絶望も虚無である。
業績のV字型回復を果たした自動車会社の社長の異名は「コストカッター」だそうであるが、彼がコミュニケーションを大切にして社員のやる気を出させたことが評価されている。社員のモチベーションの高さが会社の復活を成し遂げた原動力だといわれている。安全がV字型回復とはいかないかもしれないが、こうしたことに携わる人のモチベーションは決して低いことはないと考えている。
第41号
高木伸夫 <システム安全研究所>
企業モラルが問われて久しくなる。最近でも多くの不祥事が相次いでいる。化学プラント、鉄道、電力など社会を構成する多様な産業の安全確保にあたってその基本となるのが企業安全理念である。
企業モラルが問われて久しくなる。最近でも多くの不祥事が相次いでいる。化学プラント、鉄道、電力など社会を構成する多様な産業の安全確保にあたってその基本となるのが企業安全理念である。
企業のトップマネジメントによる安全理念は企業が社会との共生を保つための規範を示すものであり、また、安全確保にあたっての根幹をなすものといえる。企業安全理念の欠如は安全確保にあたっての従業員の意識向上を期待できず、その結果、事故予防にあたってのインセンティブが与えられない。安全とよく管理された操業の間には明らかな関係があるといわれており、安全理念のもとに事故予防にあたって財政面ならびに人材面から適切な資源を投入する必要がある。企業のトップマネジメントは生産性のみを追及せず、自らのリーダーシップのもと安全に対するコミットメントを出し、それを受けたすべての従業員が安全理念を理解しボトムアップからの安全活動を実践するという文化の確立が重要である。安全の確保は企業の社会的使命であるとともに責務でもあるという基本に立ち返って企業安全理念の確立と浸透を図ることを期待する。Safety is a good businessというではありませんか。