セーフティー・はーと

第26号 最近の事故例に対して思うこと

小川輝繁   <横浜国立大学大学院 工学研究院>
「以前は管理職、特に課長級の人は現場のことは細かい点までよく熟知していたが、最近は管理職の現場の把握が乏しくなってきている」という話をよく聞きます。
確かに事故事例の中には、管理職が現場の仕事をよく把握していなかったことが原因の一つと考えられるようなものが少なからず見受けられます。このように、管理職が現場の隅々まで把握することが難しくなる背景は経営の合理化に伴い、管理職の守備範囲が広くなっていることや認証制度の普及拡大に伴って文書化が求められるためデスクワークが増大していることなどが挙げられます。
また、最近の事故例をみると組織の中枢部の目が行き届きにくい部分で起こっているものが多いと思われます。組織の中枢部が危険性を強く認識して関心をもっている部分ではほとんど事故は起こっていないと思われます。事故が起こった後、現場で行っている作業を事業所の幹部が初めて知ったというような例も見られます。周辺部の仕事を管理職がよく把握して適切な措置を講じることのできる仕組みを作っていくことが安全確保のために重要ではないかと考えている昨今です。