福田信夫_1_20260706_H500px 2026年5月~2028年5月
安全工学会会長 福田 信夫(ふくだ のぶお)

 

このたび,総会および理事会のご承認を頂き,2026~27年度の会長を拝命いたしました.本学会の会長という重責を担うこととなり,責任の大きさを改めて感じております.微力ではございますが,本学会のさらなる発展と,産業および社会の安全・安心の向上に貢献できるよう全力を尽くしてまいる所存です.会員の皆様には,今後ともご支援,ご協力を賜りますようお願い申し上げます.
まずは,本学会の運営と発展に多大なご尽力を頂いた歴代会長ならびに役員,会員の皆様に深く敬意と感謝を申し上げます.本学会は研究発表会,研究会,講習会,セミナー,会誌発行などの活動を継続的に発展させるとともに,オンライン技術の活用や国際交流の推進など,時代の変化に対応した新たな活動にも積極的に取り組んでまいります.
さて,私たちを取り巻く環境は,かつてない速度で変化しています.気候変動の進行に伴う自然災害の激甚化,少子高齢化による人口構造の変化,エネルギー転換の加速,さらにはAIやデジタル技術の急速な進歩など,社会のあらゆる分野で大きな変革が起こっています.これらは新たな価値や可能性をもたらす一方で,これまで経験したことのない未知・未解明のリスクを生み出しています.安全工学には,これらの変化を的確に捉え,リスクを科学的に評価し,社会にとって望ましい形で技術を実装していく役割が求められています.
とりわけAIおよびDXの進展は,これから安全工学の分野に大きな影響を与えていきます.設備の異常予兆検知,保全業務の高度化,自動運転技術,画像認識による危険行動の検出,リスク分析の高度化など,AI技術,DXの活用領域は急速に広がっています.これまで人間だけでは発見が困難であったリスクの早期発見や事故の未然防止に大きく貢献することが期待されています.
一方で,AIには説明可能性や信頼性の確保,サイバーセキュリティへの対応,人間とAIの適切な役割分担など,新たな課題も存在します.今後,本学会においてもAIを活用した安全技術に関する研究交流を活発化させるとともに,AIを理解し活用できる研究者・技術者・管理者の育成に積極的に取り組んでいきたいと考えています.
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みも,安全工学にとって重要な課題です.水素,アンモニア,蓄電池,再生可能エネルギー,CCUS(CO2回収・利用・貯留)などの新技術は,持続可能な社会の実現に不可欠ですが,その多くはまだ十分な運用実績が蓄積されているとは言えません.新たな技術の導入は新たなリスクを伴う可能性もあります.新技術の社会実装を推進するためには,本学会としても,産学官の知見を結集し,持続可能で安全な社会の実現に貢献していきたいと考えています.
また,我が国が直面する少子高齢化は,安全の観点からも重要な課題です.労働人口の減少が進む中で,高齢の作業者がこれまで培ってきた知識や経験を活かしながら,安全・安心に働き続けることができる環境の整備が強く求められています.そのためには,高齢者の身体的・認知的特性に配慮した作業環境の整備や設備設計,人間工学的観点を取り入れた職場づくりが必要です.
こうした課題への対応を進める上で,国際連携の重要性もますます高まっています.本学会はこれまで培ってきた海外学協会との交流をさらに発展させ,研究成果の発信,人材交流,国際共同研究への参画などを積極的に推進していきたいと考えています.特に若手研究者・技術者が国際的な舞台で活躍できる機会を拡充し,日本発の安全工学の知見を世界へ発信するとともに,海外の優れた知見を積極的に取り込む双方向の交流を進めてまいります.
今後とも,本学会の活動に対する一層のご理解とご支援,ご協力を賜りますようお願い申し上げ,会長就任のごあいさつといたします.