会長挨拶


安全工学会 会長 藤原 健嗣(ふじわら たけつぐ)

5月15日の総会及び理事会で会長に任命されました.安全との関わりは,石油化学の現場で20年,その後管理者,経営者として,旭化成という場で安全活動を実施してまいりました.その基本は,「安全は企業活動の大前提である」ということですが,この度の会長就任にあたり,改めて安全工学会という立場から「安全」を見直し,今何をすべきかを考えました.
1. 社会ニーズは変化してきている
定款によれば第3条に「主として産業に係る安全の諸問題…」とあるが,産業界の活動理念も時代とともに変化してきており,従来は,企業は経済価値を最大化することが第1目的であったため,それに対し安全が優先するということを認識すべしとして「安全第一」という考えが生まれ,さらに安全活動の経済価値を議論すること(ex. 安全コスト,安全メリット等)まで行われている.しかし今や産業界も経済価値の最大化から「社会価値」の最大化へと考えは変化しており,ESG経営やSDGSの重要性認識という企業活動が主流になりつつある.その場合,安全は企業活動の前提という認識から,企業活動の目的そのものとなり,安全,安心,そして持続的成長に結びつく社会の具現化がテーマになってくる.
2. 安全工学会の位置づけ
安全工学会は各種ある学会の中で,横串的機能をもつ学会であることから,安全そのものを扱う工学的専門領域のみならず,社会の変化における安全の位置づけを提言としてまとめ,各専門学会と融合,協働化した活動が求められる.
3. 安全工学会の最近の活動と変革
安全工学会もここ数年,活動を充実,拡張させるため,次の様な変革を行ってきた.
 ○ 保安力向上センターの分離独立
 ○ 安全工学グループの立ち上げ
 ○ 国際学会の日本での開催とアジアにおけるプレゼンスアップ
4. こういった変化に対応するために
これから理事会の中で十分議論しながら活動計画を作成していくが,以下3項目については当面行動に移していきたい.
4.1 若いリーダーの育成
昨年,60周年記念事業の一つとして「安全工学会10年のビジョン」を語る会を立ち上げ,これから安全工学会をリードしていく世代の方々と話し合う場を持った.思想,技術,いろいろな提言をもらった.(詳細は安全工学誌第57巻2号を参照)
今後はこういった場を定例化し,かつ提言の実行組織を若い世代で立ち上げたい.
4.2 情報発信
2.で述べたように,安全工学会の活動を外に発信しこれからの社会価値の向上に向けて学会は何をすべきかということを,今までの安全工学会の枠にとらわれず発信していきたい.そのための方法として議論の場を外にも広げ新たな情報発信ツールも考えたい.
4.3 テーマの検討
世に事故,災害のネタは尽きないどころか,どんどん新しくかつ複雑化してきている.これらを専門的見地から追求,防止するための研究チームを,内外の協力の下立ち上げたい.例えば
 ・AI,IoTにおける事故
 ・変化する天災対応と予知
 ・ますます複雑化する人間行動
 ・企業における安全プロ,リーダーの育成と役割向上(CSOの提唱)
これらは,安全工学グループ,保安力向上センター,官学共同で行うテーマであり,この共同化の中で相互の向上をめざしていきたい.
まだまだ構想にすぎません.皆様からの御意見をいただきながら活動に結びつけたいので,よろしく御協力お願いいたします.