セーフティー・はーと

2002年11月の記事一覧

第32号

大島 榮次  <安全工学協会 前会長>
安全確保には2つの異なった要素が必要であると言えます。一つは安全確保のルールであり、もう一つは決めたルールが守られるかという問題であります。
最も上位にあると言えるルールとしては、強制法規がありますが、法規がどのようなルールを設定すべきかについては、現在政府内で具体的な議論が進められております。今までのルールは詳細過ぎたために一般化すると弊害が生じる危険性があり、いわゆる性能規定化の方向で見直しが行われております。東京電力の検査データの改竄と隠蔽はルールを守らなかったという企業倫理の基本的な姿勢が問題であったことは言うまでもありませんが、安全技術とは無関係な保安のルールを設定したために、現場では馬鹿らしくて守る気がしない、操業への悪影響が懸念されるといった独善的な判断が法律よりも優先されてしまったということです。法規制の機能性規定化はこれから整備されるところですが、これは公の場で行われるので衆目の監視が届きますが、もう一つの問題である決められたルールを各現場が確実に守るにはどうすれば良いのか。査察や監督といった強圧的な方法ではなく、当然まもられるという高い倫理観に基づいた安全文化はどうすれば構築できるのかが社会から問われているようです。