セーフティー・はーと

2006年4月の記事一覧

第106号 事故再発防止のためのプロセス安全管理

島田行恭 <労働安全衛生総合研究所>
前回84号にて「同じ事故を繰り返さないために」と題して,安全管理に関わる研究を行っている者としての思いを書きました。
でも,相変わらず類似の事故は繰り返されています。会誌「安全工学」の最新号(Vol.46,No.2)の中で西川氏は「事故調査報告書の多くは,物質や設備などのモノの部分に当てられ,その根本に隠れているヒト(人間とその管理)に関することまで掘り下げられていない」と述べられています。

先日も「粉じん爆発」がありました。粉じん爆発に関する事故は毎年,何件も発生しており,その度にどうしてそのような事故が起こったのか,詳細な原因の推定(現象の解明)が繰り返されています。もちろん原因解析は大事なことなのですが,もっと大事なことはやはり再発を防止するにはどうしたらよいのか?ということをしっかりと検討するべきでしょう。多くの先輩方が事故調査においても「プロセス設計,建設から運転,保全,廃棄に至るプラントライフサイクルに渡るエンジニアリング業務全体の安全管理の問題と,それに関わる人の教育,コンプライアンス問題,外部への説明などの問題にも踏み込んだ再発防止策まで検討することが重要である」と説いています。

同誌Vol.46,No.1の『安全への提言』の中で東工大の仲教授が説明されていますが,プロセス安全管理(PSM)システムは,プロセス産業におけるライフサイクルエンジニアリング全体を安全の観点から管理する仕組みです。事故の原因調査においても,調査を行う人の得意な視点からだけでなく,幅広く,再発防止策を考えるきっかけを作ることができるようなPSMの枠組みに沿った問題点の分析を行うことが重要でしょう。

一般に化学プロセスの安全管理問題は物質(反応プロセス)の安全管理とプロセスプラントの安全管理に分けて議論されています。化学プラントの安全管理に関する研究を行っている方々はどちらか一方の立場を取っているのではないでしょうか。よく言われる物質屋さんとプロセスシステム屋さん。お互いのノウハウをつなぎ合わせ,統合化されたPSMの環境を構築することが今の研究目的です。というのは壮大なテーマ過ぎるでしょうか・・・。

第105号 安全工学会の活動

小川輝繁 <本会副会長>
安全工学会の副会長を拝命して,1年弱になりますので,安全工学会の活動について私見を述べさせて頂きたいと存じます。
安全工学会の活動には,安全工学の学術的振興,会員に対する学術交流の場の提供,情報提供などの会員サービス,安全工学専門家の団体としての社会貢献などがあります。

安全工学会は前身の安全工学協会創設以来,講習会や安全工学誌などによる安全工学の啓蒙・普及や公的機関からの受託研究など社会的貢献に特に実績があり,最近でも多くの方のご尽力・ご協力により大きな成果をあげていると思います。

安全工学の学術的振興につきましては学術論文の安全工学誌掲載,研究発表会の開催,安全工学シンポジウムへの協力などが従来から行ってきた活動ですが,最近では安全工学体系化など安全工学の課題について検討するための研究委員会を学術委員会の下に設置して活発な議論を行っています。また,国際シンポジウムの開催など国際的な活動も活発化する方向で検討しています。

学術活動での現状の課題は安全工学誌に掲載される学術論文の数が少ないことです。これについては学術的に優れた論文を投稿して頂くようにするための方策を考えなければならないと存じます。会員サービスについては安全工学誌やホームページによる情報提供,論文や研究発表の場の提供などですが,さらに会員に満足して頂くための努力が必要と考えています。

安全工学会が多くの方の熱心な支援により,活発な活動ができていますことを非常に感謝しております。