セーフティー・はーと
2004年2月の記事一覧
第62号 最近の事故増加に思うこと
高木 伸夫 <システム安全研究所>
ここ数年、火災爆発事故といった化学事故が増加の傾向にある。これら事故を振り返ると、旧動燃のアスファルト固化施設での火災爆発事故、廃プラスチック油化プラントやRDF貯槽、また、ごみ処理設備での火災爆発事故、タイヤ工場や製鉄所での火災爆発事故など従来型の化学産業とは異なった分野において増加傾向にあることが特徴として挙げられる。
ここ数年、火災爆発事故といった化学事故が増加の傾向にある。これら事故を振り返ると、旧動燃のアスファルト固化施設での火災爆発事故、廃プラスチック油化プラントやRDF貯槽、また、ごみ処理設備での火災爆発事故、タイヤ工場や製鉄所での火災爆発事故など従来型の化学産業とは異なった分野において増加傾向にあることが特徴として挙げられる。
化学産業も含め、事故の原因としてリストラによる人員の削減が主因のように言われている。それも一因であろうがそれで済ませてよいものではない。字数の関係上、キーワードしか示せないが、常日頃感じている幾つかの点を次に示す。 ①操業、設備管理を協力会社、業者まかせにし、事業主体の安全ポリシーが欠如している
②化学プロセスに携わってこなかったものが主体となった運転がなされている
③取り扱う物質ならびに装置特性に対する知識、教育があまりにも不足している
④事業主体ならびに操業現場に化学に関する知識を持った技術者が不在である
⑤縦割り組織、もしくは複合組織に起因する情報交換不足と責任体制があいまいである
⑥メーカー納入設備に対する受入時の詳細な点検、確認をせずにそのまま運転している
⑦メーカーも運転現場も言われたこと、あるいは、マニュアルに記述されたことしか実施せず、
安全に対する感性が欠如している
⑧安全に関する知識の属人性が強く、論理性、普遍性に欠けている
事故は複数の要因が重なり合って発生するものであり、上に示した要因に心当たりがある関係者も多いのではないだろうか。事故の根幹原因にさかのぼるとマネジメントエラーに帰着することが多い。トップマネジメントの強力な推進力が必要である。
第61号 カンボジアの地雷処理
小川 輝繁 <横浜国立大学 大学院>
昨年12月にカンボジアの地雷処理を視察した。カンボジアの地雷処理の組織はカンボジア地雷対策センター(CMAC)である。
昨年12月にカンボジアの地雷処理を視察した。カンボジアの地雷処理の組織はカンボジア地雷対策センター(CMAC)である。
カンボジアでは内戦時代に敷設された膨大な数の地雷が埋められており、現在のペースでは全て除去するのに100年以上かかるといわれている。また、ベトナム戦争での米軍の空爆の不発弾が大量に埋まっている。地雷により子供を含む一般人が手足を失う悲惨さが報道されている。カンボジア全土での地雷による事故の死傷者数は1998年には1640人であったが、CMACの調査、広報等の活動の成果で年々地雷事故の死傷者数は減少し、2002年は366名である。一方、不発弾の事故による死傷者はほとんど横這いで、2001年以降は不発弾事故による死傷者数が地雷事故によるものより多い。
地雷や不発弾の処理活動に対して国際的な援助が求められている。日本からは資金援助の他、NPO法人に本地雷処理を支援する会(JMAS)がカンボジアに専門家を派遣してCMACと連携して主に不発弾の処理活動を行っている。プノンペンンでCMASの本部、JMASのカンボジア事務所を訪問し、JMASがプレイヴェーン州で行っている不発弾処理活動状況やポーサット州のCMASの地雷処理活動等を視察したが、JMASの高山良二現地副代表に全工程案内して頂いた。山田良隆現地代表、高山副代表をはじめ日本人専門家は自衛隊のOBで危険な仕事にもかかわらずボランティアとして活動している。高山副代表は自衛隊のPKO隊員としてカンボジアのタケオで活躍されたが、その時地雷・不発弾事故撲滅の重要性を痛感され、自衛官退官後直ちにカンボジアにおける地雷・不発弾処理の活動に参加された。同氏が「できるだけの多くの人が無理をしないでできる範囲内で地雷処理に貢献して頂くことを望んでいる。」といわれたことが印象に残っている。この言葉は安全活動にも当てはまると思われる。安全活動も関係者が自分のできる範囲で安全化に取り組むという意識を常に持っていることが必要ではないでしょうか。