セーフティー・はーと

2001年12月の記事一覧

第11号 タンク火災の消火戦術

西 茂太郎(出光興産(株)安全環境室)
去る12月3日から8日まで米国テキサス州ボーモント市を石油連盟関係者16名と訪問しました。
当地のラマー大学の消火訓練場で、石油連盟が日本における導入を推進している大容量泡放水砲の実証試験を行ない一応の目的を達成することが出来ました。

一方で、私にとって常識を覆す貴重な体験・見聞をしたのでいくつか紹介したいと思います。
① 日本では油タンクの火災を消火する時、泡消火剤を前方のタンク側壁に当てるようにして油面を泡で覆うことを戦術としているが、米国では泡は30mしか広がらないことを考慮し、タンク中央部に泡を放射する方法を取っている。
② タンクのリング火災が発生した時、米国では消防士がタンクの屋根の上に登って消火することもある。日本では消防士の安全を考慮してまずそういうことはしない。
③ 米国では放水砲の中に水と泡とドライケミカル(粉末消火剤)を混ぜて3次元火災までをいとも簡単に消火してしまう。水と混合してドライケミカルを使用するので飛距離も伸びる。風の影響も少ない。
④ 日本においては油タンクで火災が発生した場合、先ず当該タンクに入っている油を空いている別のタンクにシフトすることを考えるが、米国では油面より下の部分の損傷を防止するために可能な限り残すことを考えている。
等々です。
 米国における火消し屋は、このような消火戦術を彼らの実体験を通して体得し、実用的な防災資機材の開発まで行なっていました。彼らの自由なしかも実用的な発想に対して感心すると同時に何故日本において同様なことが出来ないのだろうか?これも仕様規定の弊害の一つではないかと改めて思いました。
ところで、我々16人は、テロの最中に良く来たということでボーモント市長より名誉市民の称号を貰って無事帰って来ました。

第10号

安全工学協会 会長 大島 榮次
安全に関する法規制については、対象となる危険物質を扱っている所にとっては直接的な関心事ではありますが、国際的にはかなり以前から、また我が国ではこの数年来、その考え方が変わりつつあります。
 象徴的には、機能性規格化という言葉で言われるように、強制法規においては、安全に関して満足すべき条件を示すに留め、それを実現する方法は直接の担当者である企業が責任をもって決定するという考え方が採用されつつあります。 その結果としては、法規制は緩和されるように見えますが、他方それだけそれぞれの事業所の自主保安の責任が重くなることを意味しております。 法規制が求める条件を満足させる具体的な方法として示されるのがJISやASMEのような技術基準ということになりますが、それとても一つの例に過ぎず、他の基準を採用しようとすれば、示された技術基準と同等あるいはそれ以上に安全性が確保されることを証明することを前提に、独自の基準に従うことが認められるのが最近の外国、特にヨーロッパでの考え方になっています。 やがて我が国でもこうした考え方が実現することになりますが、そのためには各企業が独自に保安の技術を研究して自主保安を全うする責任が求められることになるでしょう。