セーフティー・はーと

2002年9月の記事一覧

第28号 事故現場記録について

中村順   <科学警察研究所>
工場などで発生した事故に関しては、現場調査が消防、労働、通産、警察それぞれの立場で行われる。それは、原因究明、再発防止、災害予防、今後の災害対策の確立など目的もいろいろで、それぞれの機関における調査目的及び必要性に応じてなされる。
警察でも、現場調査は、その程度にかなりの幅があるが行われる。
 大きな事故の場合、現場の破壊状況、周辺の被害状況、当事者の供述など克明に記録が取られていく。それには、多くの時間と人員が投入される。例えば、壊れた配管の接続状況の確認、破片化した物の元の位置の特定、構造物の変形・移動状況、飛散物の飛散方向や飛散距離、死傷者の状況などが記録計測され、現場や器物の状況の図面が作られ、写真記録される。そのために材質の検査をしたり、専門家に立ち会ってもらい教えを受けたりもすることにもなる場合がある。
 事故原因の究明は、専門家の方にお願いすることもあるし、独自の立場で行うこともあるが、いずれにしても事故現場記録は原因究明のための基本となるものである。事故原因だけに限って言えば、詳細な現場記録は必ずしも必要というわけではない。専門家が数回現場を観て必要箇所だけ写真を撮ることで済む場合もある。しかしこうした記録をきちんと行うということは、公的機関として法令に基づいて現場を記録して事実を明らかにするという目的があるか
らである。このような事故現場での活動は、あまり知られていないようなので紹介した。