セーフティー・はーと

2001年8月の記事一覧

第3号 安全教育と安全情報

横浜国立大学大学院工学研究院   小川輝繁
事故やトラブルの原因の大半は人間が係っているため、各事業所では安全教育を保安対策の重要な柱にしておられるように見受けられます。人の危険回避能力は知識と経験に裏打ちされており、さらにこれらを危険予知に生かすことが重要です。
そのため、現場では危険予知の能力を高める教育訓練としてKYT活動が行われています。危険予知には潜在危険を洗い出してこれらのリスク(発生頻度と影響の大きさ)を評価する必要があります。人はこのリスク評価を無意識的に行い、危険回避を行っています。危険予知能力を高めるためには潜在危険の洗い出しとリスク評価を体系的に行えるようにする必要があります。この能力を身につけさせることが安全教育に求められます。安全に関する知識は科学技術の知識と事故やヒヤリハット等の体験に基づくものです。そのため、企業では社内外の事故情報を社内に周知し、また社内のヒヤリハットを収集することにより体験を活かす努力をしています。また、安全に係る業務を行っている行政機関では事故データベースの整備を行っています。また、文部科学省では事故等の失敗知識の社会的共有・活用のため「失敗知識データベース整備事業を科学技術振興財団に委託しました。このように事故情報データベースを整備し、公開する動きが活発となっています。多くの事故情報は活用するためには内容が不十分でありますが、この中から安全教育や安全技術に活用できる情報を抽出して整理することが必要です。

第2号 安全との付き合い

三菱化学㈱STRC 環境安全工学研究所 飯塚義明
「安全」と言う言葉と付き合って、ほぼ28年になる。安全技術開発を担当し始めた当時は、酸化プロセスの燃焼爆発、粉じん爆発の限界測定が主体であった。安全確保と製造コスト増という問題に最初に直面したのが、ある酸化プラントのプロセス変更であった。
安全確保のための追加投資を、熱っぽく説き、その結果、担当専務のご了解を頂き、感激し、そして、その責任の重さに恐怖した。それ以降、産業の発展と安全確保の調和をライフワークとして、今日まできた。今年は、当社の技術開発分野の大幅な組織改正があり、「環境安全工学研究所」と言う組織が生まれた。技術担当役員から三菱化学㈱本体だけではなくグループ会社全体の製造プロセスと製品の安全確保の援助することがミッションと言われた。そして、今若い研究員達が産業に必要な技術として、認知された「安全技術」の成熟を目指し日夜がんばっている。そして、安全を始めから専業の職業として、企業で働くことを目指している現役の学生諸君も出てきた。今、そんな「安全」を技術として正面から捉えている彼等の夢を壊さないようにすることが、私の義務となった。三菱化学と言う一企業を超えて、産業、科学の発展と安全との調和に挑戦する技術者の育成に少しでも役立ちたいと思っている。