セーフティー・はーと

2006年3月の記事一覧

第104号 事故の後始末

岡田 <三井化学>
関東では桜が咲き,何か気持ちが高ぶるのは私だけでしょうか? 入学や転勤,異動などもあり,生活が大きく変わる時期でもあります。
工場などでは,人事異動後,直ぐにトラブルが発生すると【歓迎会】とうれしくない呼び名の現象がありがちなのでみなさんも注意してください。

話は,変わりますが先日あるセミナーに参加して貴重な話を聞くことができたので紹介します。

2003年9月に発生した北海道十勝沖地震で大規模タンク火災を発生させてしまったI社の方が事故の復旧作業について講演されました。 事故については,多くの方がご存じだと思いますが,地震の影響で浮き屋根式タンクの屋根が沈降し,火災が発生。

泡消火剤も風で飛ばされ,効果無く,長期間火災が続くという災害で,後に泡消火剤の備蓄や大型放水銃を導入するきっかけになった意味深い災害でした。

その被災タンク43基の復旧が2年9ヶ月かけて,昨年6月で完全復旧したとのことでした。 復旧作業は,北海道という地域性もあり,冬場は雪かきから始まり,原油の抜き出し,水への置換,その後タンク内に潜水夫の休憩小屋を設置し,潜水夫により脱落部の調査等を行ったというものでした。

復旧作業にあたられた方々の苦労が伝わってきました。 事故を起こしてしまうことは,もちろん良くないことですが,起きてしまったことに対し,いかに反省し,再発防止を行い,ちゃんと後始末することができるかどうかによって,会社の実力が現れるのではないでしょうか?

最近,トラブルが発生しても後始末せず?できず?にうやむやになっていることが多いような気がします。

まずは,災害を発生させないことが一番の対策とは思いますが

第103号

飯塚義明 <(有)PHAコンサルティング>
総合化学会社の開発研究部門で30年間「安全評価技術の開発」と「開発部門や生産部門の技術支援」に費やした。
3年前にこれまでの経験を活かして,他の会社の安全技術(思考方向)向上のお手伝いをしているが,その中で感じたことは,1990年代前半までは,企業間で安全意識に温度差が見られた化学産業界であったが,その後,技術,意識の両面で企業間の差はかなり無くなってきていると思われる。しかしながら,ある化学品加工メーカーの工場幹部と保安安全について議論したところ,その工場幹部から「最近,当工場は全く事故が無く,このような状況下での高い安全意識を継続させることが難しい」と告げられた。この会社以外にも,世界に誇れる安全で,生産性の高い技術が日本の産業界では,活躍している。これらは,今話題の団塊の世代の優れた技術者達がつくり上げた「生産技術」の成果である。これらの技術をどのような形で後世に伝えて行くかが重要な課題である。過去の事故情報や失敗事例のデータベースも有用であるが,他人のことではなく自分達の職場の問題として認識させる手法の取り入れも考慮すべきことと思う。先輩達がどのような経緯をたどって,成功に至ったかを詳細に解析することも一つの方法である。即ち,何故安全が維持されているのか,そこにある技術的要因とソフト的(人,組織)要因との係わり合いを科学的に解明することである。「たまたまの安全なプロセス」にも事故を起さない理屈があることを知ってほしいと思っている。