セーフティー・はーと

2005年4月の記事一覧

第88号 大規模事故の続発に思う

藤田哲男 <東燃化学(株)>
一昨年,製造業等での大規模事故が続発したのに伴って,関係省庁を中心として種々の対策が講じられて来たことは,記憶に新しいと思いますが,この所,自然災害を含めて内外でまた大規模事故が後を絶たない状況にあるようです。
4月25日には,JR宝塚(福知山)線で電車脱線事故が発生し,多くの死傷者が出ましたことは誠に痛ましいことです。実は,私は今回のセーフティー・はーとの執筆に当って,同業に近い石油精製分野で,3月23日に米国BP Texas City Refineryで発生した爆発火災事故に関連して,原因はまだ十分に解明されてはいないものの,事故は忘れかけている時に起り易いものだと言うこと,また原因は意外に単純で,且つ通常運転ではなく非定常作業の段階で起り得るものではないかと書いてみようと考えていた所でした。このJRの事故では,事故原因についてこれから詳細に調査が行われますので,予断は許さないものの,カーブでの減速という変更作業に対するリスクアセスメントの不備ないしは定時運行を優先するに安全に対する配慮が二の次になった可能性も考えられます。BPの事故の場合,定修後の変更管理に対するフォローアップシステムの問題ないしは手順の遵守のあり方に問題があるように見えますし,加えて死傷者を多く出した要因として仮設小屋の管理体制の問題も考えられます。何やら,まとまりのつかないことになりましたが,要するに,非定常作業に係るリスクアセスメントの徹底と変更管理の手順の明確化・遵守について周知することの必要性が改めて問い直されていると考えました。「安全第一」“Safety First”---極めて単純な表現ではありますが,意味の重い言葉だと改めて思い直している今日この頃です。