セーフティー・はーと

2008年2月の記事一覧

第122号 事故情報をどう活かすか

板垣 晴彦 <(独)労働安全衛生総合研究所> 2008年2月18日掲載
ガス湯沸かし器やシュレッダーでの製品事故などが契機となって昨年5月に消費生活用製品安全法が改正された。
この改正とともに製品評価技術基盤機構のホームページ上にて製品事故の情報が公表されるようになった。新聞を中心にリコール広告がほぼ毎日掲載されるほどだから、事故情報となるとさらに多いだろうとは思いつつ最近のぞいてみたところ、なんと1万8000件近くの事故情報が待っていた。事故調査が進み解析をある程度終えたものから順次登録されているようなので、1996年ごろから2006年3月までの10年分だ。なお、最新の事故情報は速報の形で別に公表されている。

さて、これだけ件数が多いとページをめくる形での掲載や閲覧は大変なので、さっそく提供されている検索機能を使ってみた。「火災・火事・発火」で検索すると約5600件、「破裂・爆発」では約1000件、「墜落・転落」では約250件、「はさまれ・巻き込まれ」では約100件という結果だった。「火災」が特に多くなっている理由のひとつは、何がどのように危険なのかを漠然としか知らなかったり、気にかけていなかったりすることがある消費者の安全のために、製造事業者や消費生活センターが積極的に事故を報告していることや、製品評価技術基盤機構側も情報収集に力を入れていることが挙げられよう。また、法律改正のいきさつから、ガス湯沸かし器などの燃焼器具と家庭用電気製品が全事故情報の約2/3を占めていることもその要因と思われる。

事故情報のそれぞれには、1~2行の簡単なものではあるが、事故の内容も記載されており、さらに原因についても分類がなされている。その分類結果によると、消費者の不注意や誤使用などが約6000件と多く、製品に起因する事故は約4500件だった。ただ、原因不明や調査中のものが合わせて6000件以上もあった。詳細な情報をしばしば得にくいことや件数が膨大なことのためわからなくはないが、少々気になってしまう。

ところで、産業災害の統計は長く続いているが、対象としている事故は、その事故によって死亡するか、あるいは、病院での治療が必要となるようなある程度以上のケガを負った事故、また多くの場合にその作業には危険があることを事前に承知していた中で起きた事故、である。このため、両者の発生件数などを直接比較することには、ほとんど意味がないが、事故情報の分析の手法や考え方は応用できそうだ。一方、一般消費者が陥りやすい誤使用や不注意を分析することが、産業現場での事故防止対策のヒントとなるかもしれない。もちろん、製品の設計や品質管理に関する問題は、産業現場にもあてはまるだろう。一般家庭と産業現場では、作業目的、作業環境、安全意識も異なるから、表向きの事故原因は異なるように見えているけれども、根本的な原因は似通っているものと思うからである。