セーフティー・はーと

2007年9月の記事一覧

第116号 「コミュニケーション」と情報技術

仲 勇治 2007年9月25日掲載
ISOの標準化に参加したことがあったが,そこでの会議の進め方と日本における同様の会議の進め方が全く違うのに驚かされた。
まず,両方とも議事次第が用意されるが,向こうは,項目やそれらを議論する順番に結構時間を費やし,その日に議論し,決めたい事項を明確にしていく。日本では,議事次第の中に委員長挨拶などから始まり,項目や議論の順番などの議論には時間を割かないことが多い。どうも,向こうは参加者のバックグラウンドは異なるのが当然であり,その違いを旨くかみ合わせることで広い観点から議論しながら素目標に向かって議論をする意図を持っていた。一方,日本流は,会議の主催者側の意向表明があるものの必ずしも十分でなく,参加メンバーが意向を徐々に理解しながら,意向に添って議論を進める場合が多い。 
どちらが旨いコミュニケーションの取り方であろうか? 
もっと驚いたことは,書記の能力の高さである。委員の話をコンピュータに打ち込み,それも色分けして。休憩の10分前に,同色を合わせながら,議論の中間のまとめを作ってしまった。利用者の能力が高ければ,もの凄いコンピュータのパワーを引き出せる。 コミュニケーション手段としてコンピュータはもはや必須である。

安全技術に関わる設計や運転標準などの図書は,過去に行われた設計で考えていたことを表現している。今それらを見ている人達は,当時の設計に関わった人達と交信していることになる。しかし,必ずしも交信がうまくいっていないことは,団塊世代の退職に伴う技術伝承問題として表面化している。

コンピュータのパワーを用いて,何処まで論理的に,多角的に,安全管理を支える技術として整備できるのであろうか。