セーフティー・はーと

2007年7月の記事一覧

第114号 安全のイメージ

安田憲二 <(独)国立環境研究所>
廃棄物の処理では,取り扱い物の組成が不均一で変動が大きいため,
安全への対応が原料から製品を作る場合とは違ってきます。
廃棄物処理施設を建設する場合,許可等を受ける過程で住民の意見が重視されますので,個々の住民が持つ「安全のイメージ」が施設の内容に大きな影響を与えます。

廃棄物の中間処理施設の建設では,環境負荷に関して環境基準に基づく排出基準値の順守が求められます。施設の内容は,当然それに対応したものになりますが,多くの場合,排出基準値の数分の一から1/10程度の厳しい値に設定されています。処理施設が建設される場所は地域性に違いがあるため,周辺環境により基準値よりも厳しい値を設定する必要のある施設もありますが,地域性に関係なく,一律に値を設定するケースも少なくないように思われます。

「安全のイメージ」はリスクマネージメントに属する領域ですが,不必要に厳しい値に対応した施設を建設した場合,建設費や維持管理コストの増加や,資源の無駄遣い,地球温暖化への負荷を高める原因にもなります。自治体等は住民との論争を避ける傾向にありますから,不必要とは感じつつも過剰設備の施設を建設しがちです。

地球温暖化の影響が抜き差しならぬ状況である昨今,専門家も交えて「安全のイメージ」をより客観的なものにし,過剰設備を無くして資源の無駄遣いや地球温暖化への影響を軽減するための努力が必要とされているのではないでしょうか。皆様はいかがでしょうか。