セーフティー・はーと

2002年3月の記事一覧

第17号 リスク把握の技術について

(株)三菱総合研究所 野口和彦
リスクを把握するためには、リスクの持つ2つの要素、すなわち影響の大きさと起こりやすさ(発生確率)を求める必要がある。
まず、影響の大きさの算定には、以下の項目が使われる場合が多い。
リスク把握の技術について
 リスクを把握するためには、リスクの持つ2つの要素、すなわち影響の大きさと起こりやすさ(発生確率)を求める必要がある。まず、影響の大きさの算定には、以下の項目が使われる場合が多い。
  1. 各リスクの指標:労働災害リスクでは死傷者の数、環境リスクでは汚染の範囲とレベル等
  2. 金銭換算した値:影響の大きさを金銭に換算したもので、その金銭換算には以下の項目が含まれる場合が多い。
    ① 人的被害
    ② 環境被害
    ③ 生産被害
    ④ 損害賠償
    ⑤ 対策費の増加
    ⑥ 機会損失
    ⑦ 生産の減少等
  1. 社会的信頼性:企業の社会的信頼性が低下することをリスクと見る考え方であり、直接の物的・人的被害が無くとも企業活動に大きな影響を与える場合がある。
次に、起こりやすさ(発生確率)であるが、この指標は以下の方法で求められる場合がある。
  1. 安全理論による解析
  2. 統計手法
  3. 経験による評価
  4. 他事象との相対比較 等
これらの指標は、数学的な確率で表されることが求められているわけではなく、頻度やランク分類(大、中、小等)でも、問題無い場合がある。さらに、評価者の主観的価値を排除したい場合は、評価対象となる事象を以下の事実関係で整理して、起こりやすさの指標とすることが可能である。

表 現状の知見で起こりやすさを評価する場合の例
起こりやすさ
現状の知見
良く起きる
現在起きている
時々起きる
過去に経験したことがある
起きる場合もある
自社では経験していないが、日本で起きている
めったに起きない
日本では発生していないが、他国では発生している
起きる可能性は極小である
理論上可能性がある

第16号 インターネットによる事故情報

科学警察研究所 中村順
化学物質にかかわる爆発事故の発生を自宅で知り、とりあえずその物質についてインターネットで検索してみたところ、MSDS(化学物質等安全データシート)を始めとして、火災爆発危険性や、過去の事故事例、関連法規などを見つけることが出来た。
中でも海外、特にアメリカの機関の報告書(例えばChemical safety and hazard investigation board)などからは多くの有益な情報を得ることが出来た。
「セーフティー・はーと」を読まれておられる人なら、こうしたことは当然のことと思われるが、事故の調査をしてみて、過去の教訓が生かされていないことを見ることも珍しくない。最近の傾向として、数年以上前や、海外で起こった同種の事故原因が繰り返されることがあげられている。昔は、事故事例の収集は困難で専門家の記憶にたどるようなところがあったが、現代では、インターネットを通じて容易に得ることが出来る。過去の事例は決して大きな事故だけをいうのではない。安全弁から吹き出しただけで終わったものや小規模な発火事故も重要である。そこには大事故につながる潜在危険性が示されている。異種の溶液を試験管で混ぜた際に、炎をあげて激しく燃える組み合わせは、混合危険と認識されるが、ステンレス製の大きなタンク内で同じ反応が起こったときのすさまじさに思いを致すべきである。事故データベースの充実と共に、集めた事例の検討分析を行い活用されることが必要である