セーフティー・はーと

2002年1月の記事一覧

第13号 ルート・コース

横浜国立大学大学院工学研究院  小川輝繁
事故調査では、直接原因を明らかにするだけではなく、事故を引き起こした背景について分析し、根本的な要因(ルート・コース)を明らかにし、これにメスを入れなければ十分な安全対策とはなりえない。
かつては直接原因だけを明らかにして再発防止対策を講じることが一般的であったが、最近ではルート・コースの撲滅の重要性の認識が次第に浸透してきている。しかし、最近の事故の再発防止対策をみると、事故に結びつくハード面の改善、ルール違反防止や安全意識の向上のための教育、マニュアルの不備の是正、類似設備、施設への水平展開などが中心で、根本的なルート・コースに踏み込んだものはほとんど見られない。事故や問題が起こった場合は原因究明においてルート・コースを明らかにして、事故防止のための体質改善を実施しなければならない。
企業や事業所の安全文化・倫理の不備がルート・コースになることが多い。これは企業や事業所の体質・風土、経営姿勢、職場環境、技術力、組織、リスクマネジメントシステムの機能と有効性等の問題である。
安全を確保するためには、事故や問題起こった場合だけではなく、日頃からルート・コースになりうる要素がないかを検討しておく必要がある。