セーフティー・はーと

2001年9月の記事一覧

第5号 安全マニュアルの風化防止を

<システム安全研究所 高木 伸夫>
世の中マニュアル社会である。業態に応じて多種多様なマニュアルが存在する。ファーストフードチェーンの多くでは注文したもののほかに、これはいかがですか、これもいかがですかとうるさいほどの同じ問い合わせに会う。
同系列のチェーン店ではどこに行っても同じ笑顔で迎えられる。マニュアルどおり対応である。アルバイトを使い、大量にものをさばく業界にあっては、個人の能力に期待することは避けマニュアルに従った受け答えをするほうが効率的であるし、マニュアルから若干外れた対応をしても決定的なミスを防ぐことはできるであろう。それでは産業分野における安全に関するマニュアルはどうか。装置産業では事故を教訓として安全作業マニュアルが作成されることが多い。事故の悲惨さを覚えている間はマニュアルが作成された背景を誰もが理解しているためマニュアルは遵守される。しかし、年月が過ぎ、マニュアル作成に携わったベテランが職場から去り世代交代が起るとマニュアルの風化が始まりやすい。面倒だからこのステップは省こう、これくらいなことなら問題ないだろうと手抜きがなされ、これにより事故が発生する。JCOの事故もこの要素を含んでいる。安全マニュアルからの逸脱は取り返しのつかない事態に発展する危険性が高い。マニュアルの風化防止が必要である。そのためには、安全マニュアル作成の背景、マニュアルに記述されている内容それぞれの意味を定期的に教育していくことが必要といえよう。