歴代会長挨拶

氏名 三浦 昭(みうら あきら)
在任期間 2002年6月~2004年6月
会長挨拶 この度,安全工学協会の会長に就任致しました,この2年間,大島前会長の下で副会長を勤めさせていただき,それまでのまったく白紙の状態から協会の活動を勉強することができました.
率直な感想を申し上げますと,予算規模は小さいにかかわらず,たいへん活発に活動されていると思いました.特に昨年の11月,京都で開催された
APSS2001は協会としての大プロジェクトであり,海外を含めた予定以上の参加者があり大成功であった一方,予算面も含めてきわめて円滑に運営されたことに強い感銘を受けました.協会の組織も整備されており,各委員会の活動も充実しているように思っております.“安全工学”の内容も安全に関連する今日的テーマを採り上げ,協会の機関誌として適切な情報発信をしていると認識しております.
しかしながら,過去数年間にわたり協会の幹部や先輩の間で協会の将来の発展や役割について度重なる議論がなされてきたことも伺っております.政治も経済も,また産業構造も大きく変革しっつあるこの時期に,伝統ある本協会の役割を見直すべきであるとの問題提起はその通りであると思います.
確かに‘安全’という言葉で表現される概念は21世紀を迎え,ますます社会生活や事業活動におけるキーワードとしていろいろな場面でクローズアップしております.科学技術の進歩とともに,これまでになかった21世紀型の災害も出現し,また,対策を迫られております.日常生活におけるエンドクリン問題や食肉のBSE問題など豊かになった生活と引き換えに新たな問題にさらされております.
また資源やエネルギーの浪費から地球環境の悪化を招き,炭酸ガス排出量削減のコミットメントをせざるを得ない状況にあります.
このような情勢の中で安全というキーワードを会の名称にいただいた当協会のこれからの役割をどう考えるのか,歴代の幹部が悩まれたテーマであると思います.前会長のときに21世紀型安全知識基盤イニシアチブ構想を検討しておりました.これは,化学・土木・建築・電気・機械・原子力と縦組織で分野毎に整備された安全に関する知識を共通の安全知識にまとめ体系化し,この知識基盤を活用することによって教育プログラム作成,知識共有化システムの構築などにつなぐという構想であります.安全の問題はあらゆる産業分野においてきわめて重要な問題であるだけに,各分野の学会において固有の安全問題の研究が行われていますが,当協会の活動はできるだけ重複を避け,縦組織の安全基盤構築を担う学会と緊密なコミュニケーションをはかり,これを横通しする役割を担当することによる新たな安全知識基盤構築の推進をはかる企画であります.
今世紀に入ってからの安全問題は複合化し多様化し,また社会の感受性が鋭敏になり早期に原因の解明を求めるようになりました.
われわれの活動の成果が安全な生産活動,安心な社会生活への貢献をすることを前提に,時代の要請に応えられるように当協会の役割を明らかにし,具体的な行動につないでいく必要があります.そして会員各位に対する有益な知識情報や教育プログラムの提供などの諸活動を充実させ,存在感ある安全工学協会に発展することを願っております。
新しく選任されました副会長・理事・委員長の皆様と活発な議論を経て,この2年間の活動のシナリオを描きたいと考えております.
会員の皆様方の御支援を心よりお願い申し上げます.