歴代会長挨拶

氏名 大島 榮次(おおしま えいじ)
在任期間 2000年6月~2002年6月
会長挨拶 この度,会員の皆様の信任投票と総会の承認を経てこれからの2年間会長を仰せつかりました.協会運営にはさまざまな難しいことがあることかと思いますが,幸い副会長に北条秀光先生と三菱化学(株)会長の三浦昭氏にご就任いただくことができ,理事の方々と共により良い協会に発展できるよう努力する所存ですが,これとて各委員会の方々,そして会員各位のご協力なしには実現できません。忌揮のないご意見をお寄せいただき,よろしくご協力くださるようお願いいたします.
極度に技術が高度化した現在の文明社会では,いったん運転に失敗して事故が起きると,チェルノブイリの原子力発電所の事故や日航機123便の墜落事故のような深刻な被害を被る結果となり,それを防止するためにはさらに高度な技術が必要となります.複雑な構造をしたシステムを制御するには,もはや人間が直接操作することができず,コンピュータすなわちソフトウェアの介在が必要となり,ハードウェアでなにが起きているかを直接理解することが困難な事態がしばしば起きています.
航空機の自動操縦システムとパイロットとの意見が合わずに墜落した名古屋空港での中華航空の事故などはその例であります.また,スリーマイル島の原子力発電所の事故では,200以上のアラームが一斉に鳴り出し,オペレータにはなにが起きているのかさっぱりわからず,「パネルを外に放り出したくなった」と述懐しております.このような複雑なシステムを安全に運用するためには,従来の方式とは異なった高度な管理システムの構築が要求されているように感じます.一方,一般社会が要求する日常生活での安全性の水準は,ライフスタイルの高度化に伴って非常に厳しくなってきております.以前には検出すら不可能だったナノグラムといった微量な有害物質も規制の対象となっており,これまでより1桁も2桁も高度な安全管理の技術で対応しなければなりません.
こうした世の中の要求に応えて安全工学として取り組むべき課題は非常に広範で,あらゆる技術の分野との連携が必要となります.安全工学協会では以前から対象をどの範囲にすべきかということが議論されてきました.安全といえば,健康,防犯,交通,その他あらゆる分野で問題となりますが,現在は協会が主として対象としている分野は,爆発や火災などの化学的な現象とそれの取り扱いに関連する問題です.あまり問口を広げることは活動が散漫になりますし,逆に限定すると視野が狭くなってしまいます.こうした問題も,会員の方々の意向をぜひ聞かせていただきたいところです.
話題は変わりますが,最近の景気動向を反映しているのか,どこの学協会でも退会の件数が増えていると聞きます.本協会の年会費は正会員が9600円ですが,考えてみるとこれは1か月800円,1週間にコーヒー1杯の値段ですし,法人の年会費でも,社員1人の月給程度にも満たない額です.
もし,会費の負担が退会の理由であるとすると,協会の活動が会費に見合うものと評価されていないということになります.会誌や行事の内容の充実とサービスの向上が求められていることを再認識する必要がありましょう.しかし,現実には会費分の特典があるかどうかの判断は個人的な基準によるところが大きく,客観的に決めることは困難です.
それと同時に,安全工学協会は安全工学に関心のある工学者の人脈と交流の場であり,技術者として社会に対して安全技術の在り方を主張する場でもあります.このような安全工学協会の社会的使命も十分理解していただき,これからも協会の活動に積極的に参加,協力をお願いいたします.