歴代会長挨拶

氏名 玉置 明善(たまき あきよし)
在任期間 1967年5月~1978年7月
会長挨拶 この4月,当安全工学協会の会長をお引き受けすることになりました.当協会は,産業に伴って起こる各種災害の発生原因および経過の究明,ならびにその災害の防止に必要な科学および技術に関する系統的な知識体系としての安全工学の確立と,技術者,研究者,経営者の皆さんに対する安全工学の知識の普及向上ならびに,専門の安全工学技術者の育成をはかり,産業の発展と社会の福祉に寄与するため設立されました.産業界の大先輩であり,東洋高圧工業株式会社の顧間であります柴田勝太郎先生が当協会の会長に就任され,昭和32年7月以来,10年の永い間にわたり,協会の目的逹成になみなみならぬご尽力をされてこられたのであります.最近健康上の理由により,ぜひ2代会長として今後の面倒をみてもらいたいとの,たってのご依頼がございましたので,浅学非才ではございますが,お引き受けした次第であります.
最近のわが国の産業の発展はきわめて著しいものがありまして,それに伴っていろいろの災害は毎日の新聞紙上に報道されない日はないほどに発生しております.また,一方におきましては,技術革新のテンポは非常に早く,わが国でも新しい技術がつぎつぎに開発され,また外国技術の導入も盛に行なわれております.これらの開発発展が人類の福祉と繁栄に貢献することは,誠に慶賀にたえないのであります.しかし新しく開発された技術には末知の災害発生の要因を潜在させていることも否めない事実であります.また,導入されます外国技術にしましても,よく検討しないと,予想もしない失敗を起こすことがあります.また特に化学プラントにおいては,研究室の実験やパイロットプラントのテストではよくても,大形化すると操業中に,思わぬトラブルの起こることが多いのであります.これらの災害が企業の内部だけにとどまらず,場合によっては社外にまで被害を与えることも少なくありません.わが国のようにせまい国土のなかで生産の向上とともに安全を確保するためには,まず工場立地の当初から起こりうべき災害を想定し,これらの災害を発生せしめないための対策を考える必要があります.したがいまして過去に発生した災害の原因,経過を科学的に,また技術的に究明すると共に,同様災害の再発の防止のための技術基準を確立すること,必要に応じて法規の改廃策定を行なうこと,また技術者,研究者,経営者全般に安全工学の知識を向上させ,災害を未然に防止する努力は今後ますます必要となっております.
時代の進展に伴い,今後の産業災害の防止はいわゆる安全工学をもって解決すべき現状に立ちいたっております.しかしながら,安全工学を系統的な知識体系として確立するためには,物理,化学,数学などの基礎学間はもちろん,時には心理学,生理学,医学といった分野にまで,基礎的研究が行なわれなくてはなりません.ここに専門的に活動する安全技術者の育成強化が必要となってくるのであります.当協会も柴田前会長のもとで10年間礎石をきづきあげてきました.今後さらに安全工学の普及と推進をはかり,産業災害の防止を科学化する大使命を逹成し,社会の福祉に貢献するために,当協会といたしまして,つぎのようなことを目標としなければなりません.
(1) 優秀な安全技術者の養成と,これら安全技術者の行政官庁や企業体における有効活用.
(2) 内外の現行保安関係,各種技術基準の再検討と,新しい生産技術(設備技術)に適応した安全技術基準の推進勧告.
(3) 行政官庁や企業体内における安全技術者に対する評価の高揚と地位の向上
会員のみなさんのご協力とご研鑽をお願いいたします.