歴代会長挨拶

氏名 伊藤 東(いとう ひがし)
在任期間 2014年5月~2016年5月
会長挨拶 5月の総会にて仲会長の後任として,2014,2015年度の会長を仰せつかることになりました.昨今の事故多発を省みますと本学会が果たすべき役割の重大さと責任の重さを感じて居ります.
安全が社会的に大きな話題となり,また,産業界では安全優先の認識が高まって居ります.この様な状況下での安全工学会が果たし得る役割を整理し,活動して行くことが必要と考えます.最近出され事故報告では,事故の原因と改善点が物的要因と人的要因に分けて提起されて居ります.安全工学会では,昨年4月に「保安力向上センター」を発足させ,人的要因(安全文化)を含めた企業の「自主的な保安力向上」への支援活動を推進して参りました.この活動には各方面より更なる進展が強く期待されて居ります.
日本の安全レベルの向上に寄与するための課題は短期~長期にわたり数多く有りますが,実行可能な課題を着実に実施して行きたい.気が付く範囲ですが実行課題を整理して見ました.
1. 大学等と産業界との連携強化(研究課題等)
安全工学会の目的に『産業に係わる安全の諸問題を広く工学的に調査・研究し……社会の安全・安心に貢献する……』とある.産業界の安全課題を学会内に広く認識してもらい大学等での工学的検討を推進し,その成果を産業界に反映させる.
① 「研究発表会」に自社の安全活動や問題点を積極的に発表することを企業に要請し,課題を広く発信してもらう.
② 保安力向上センターが行う「企業での安全活動評価」に大学院生等が参画し,大学等の研究機関による現場課題の把握を図る.
2. 安全教育への取組みを始動
東日本大震災で安全教育を受けた小学生が全員無事に避難したことも有り,「社会生活での安全教育」への関心が高まっている.また,フランスの安全文化研究所では「企業への階層別安全教育(含,経営層)」を実施している.安全工学会が日本での安全教育の推進役を担う.
① 社会の各層に有効な安全教育の整理を試みる.(小学~大学~実社会)
② 各企業が保有する「安全教育の施設・内容」を整理し,国内全体での活用を検討する.
3. 安全工学関連組織の連携
安全工学会内の「保安力向上センター」は企業への支援活動が拡大しており,組織的に自立することも想定される.自立しても本学会と“一心同体”の活動となりますが,更に安全に関与する各種組織と広く連携し,社会からの幅広い安全への要請に対応する.
① 化学関連の安全組織(総合安全工学研究所等),他学会安全部門との連携
② 企業の安全部門や業界団体(日化協・石化協等)の安全活動との協力推進
4. 国際交流と人材育成
本年5月に岡山にて開催された国際学会(WCOGI)は成功裏に終了.この中で多くの若手研究者が英語にて発表・討論を行い貴重な経験を積まれた.産業のグローバル化に対応し得る人材の育成と海外でも適応可能な安全文化の養成のためにも国際交流を推進する.
① 国際学会への積極関与,海外との交流機能の確保を図る.
② フランス安全文化研究所等との連携,人材交流を進める.
5. 学会誌の充実
学会誌は年6回の発行.投稿論文数の更なる増加を大学や企業等に期待したい.一方,研究論文の対外的アピール度から英文誌発刊への要請も強く有ります.学会誌は会員と学会の絆役を担って居り,学会誌の充実は会員増への寄与も期待されます.
① 企業からの投稿を含め論文投稿数の増加を図り,英文誌の可能性を検討する.
② 学会誌への広告を広く企業に依頼し,企業公報への活用と学会誌の財政強化を進める.
以上,抽象的一般論ではなく,具体的な実行課題として整理して見ました.会員の皆様によるご検討とご協力が頂ければ幸甚です.『一人ひとりが主役』になって,日本の安全レベル向上に向けて頑張って行きましょう!