歴代会長挨拶

氏名 難波 桂芳(なんば けいほう)
在任期間 1986年6月~1994年6月
会長挨拶 このたび安全工学協会会長に就任することになりました.会員の皆様にご協力いただき,協会の発展に努力いたしたいと存じますのでよろしくお願いいたします.
この協会は故北川徹三先生の組織された安全工学研究会という研究グループから発展し,主として産業安全を工学的に逹成ずるために努力してまいりました.現在では安全を目的とした類似の団体も多くなってまいりました.そのなかでこの安全工学協会の特色を生かし,隆盛にしていかなくてはなりませんので,この協会の特色を考えてみたいと思います.
この協会の特色の一つは,安全工学についての研究発表の場を提供しているということです.会誌「安全工学」は安全工学に関係した研究報文発表誌として,公式に認められてきています.学位論文の審査にあたり,「安全工学」は学会誌として認められております.また,毎年1回開催している研究発表会は,安全工学の口頭発表の場として十分に役立っております.企業からの発表件数の少ないことは残念なのですが,聴講にこられる方の多いことはその現れだと思います.
この二つの機能はいかに協会の財政状態が苦しくなっても続けなくてはならないものと思います.この機能を持っていることから,安全工学協会は最近の日本学術会議の改組にあたっても学術団体の一つとして認められましたし,安全工学研究連絡委員会の構成員となっております.
この協会の他の特色の一つとしては,安全に関係のあるすべての官庁のいずれとも偏ることなく協力し合って安全を目差した研究を進めることができることです.このことにより,これまでに色々と面白い研究を実施してまいりましたが,逆にこのことのためいまだに任意団体で,法人化できていないことは弱点ともなっております.
それと共に,この協会はあらゆる業界とも偏ることなく協力関係にありたいと思っておりますが,この面ではまだ残念ながら不十分です.協会をこれまで守り立ててきた方々の専門分野の関係から,ある方面に偏っているといわざるを得ません.これは安全を裏返した不安全の表れた形の災害として,火災爆発は化学現象であり,工業中毒・職業病もその多くが化学物質に関連しているので,いたしかたないかもしれませんが,あらゆる業界と等しく協力していけるようにしたいものだと思っております.
安全工学に関係した研究を実施しておられる研究者が交流される場を協会に作りたいものだと思っております.研究発表会の時の懇親会はその役割を若干は果たしていると思いますが,テーマを決めて現役の研究者に集まってもらい,自由に討議し,研究の芽を育てていってもらいたいと思っております.
これとは逆に,協会が今日の姿になるまでの間に理事として,あるいは各種委員としてご協力いただいた方々が,年令の故をもってこれまでの仕事から離れ引退していかれることが近年非常に増加し,寂しいことです,この方々の貴重な体験をお話しいただいて,安全のエキスパートとして持っておられる知恵を後世に生かすことができたらよいと思っております.これはかつて協会として安全技師制度を検討していた時考えた,安全技師の相互研鑽の場の形を変えたものになると思いますが,この安全技術のエキスパートに集まってもらい,話を聞く会は是非早く実現したいものと思っております.
協会の乏しい会計事情では,これらの試みがどれだけできるかわかりませんが,参会者各自が会費を持ち寄ってでも早く実現したいものだと思っております.
安全工学協会は会員皆様のものです.決して役員や委員のものではありません.会員皆様が実現したらよいと思われることを企画し,実現させることが望ましいと思います.色々とご提案いただければ常任理事会にでもかけて検討し,実現に努力したいと思いますのでよろしくお願いいたします.