セーフティー・はーと

2002年6月の記事一覧

第23号 「知識化」や「教訓」の次に来るもの

和田有司  <(独)産業技術総合研究所>
このたび普及委員会委員を拝命しました。安全工学の重要性は誰もが認めるところですので,安全工学協会の普及にはどこかに突破口があると信じて微力ながらお手伝いしたいと思います。
さて,前号の福田先生や19号の若倉氏が書かれているように,最近,事故事例を活用しようという動きが各方面でみられます。それも,事故事例データベースを作るのではなく,「知識化」や「教訓」として事故事例を一般化して事故防止に役立てようという動きです。おそらく次は,こうした「知識」や「教訓」を分野を越えて活用するために,得られた「知識」や「教訓」を学問として体系化し,教育するシステムが必要になるでしょう。幅広い分野の「知識」や「教訓」を学問として体系化し,それ教育するための安全教育システムを構築するのは,幅広い分野の安全の専門家の方々が集まっている安全工学協会にしかできないことではないかと感じています。

第22号 災害事例解析と防止対策検討委員会の活動

福田 隆文    <横浜国大>
当協会学術委員会に「災害事例解析と防止対策検討委員会」(委員長:横浜国大・関根教授)が設置され,活動しています。
私も委員ですので,その紹介をしたいと思います。失敗学などの言葉が新聞などに出てくることが多くなりました。現在,いくつかの学会などが協力して失敗事例データーベースの構築と活用の検討が進められています。ここでは,建築,化学物質・プラントなど4分野で,各々数100件程度の失敗事例データベースを作るそうです。一方,私たちの委員会は,データベースではなく,絞り込んだいくつかの事例につ いて,直接原因だけでなく背後にある要因や根本原因にまで遡って解析し,教訓を抽出し,更に再発防止に何が大切かを導き出そうというものです。現在,40余件の事例について,解析のための資料収集と視点をどこの置くかの討論を行っています。絞り込んだ事例からの解析ですので,「読み物」として通読して,共に考え,普遍的な教訓を導き出せるものにしたいと考えています。 失敗事例データベースと相互補完的に活用して頂けると考えています。成果は成書としてまとめます。期待して頂きたいと思います。