セーフティー・はーと
第83号 仕組みと運用
小川輝繁 <横浜国立大学>
現在,我が国に事業所の安全対策をみると,重大な事故に発展する可能性のあるものについてはハード対策にコストをかけて,重大災害にならないようにする努力がなされている。
現在,我が国に事業所の安全対策をみると,重大な事故に発展する可能性のあるものについてはハード対策にコストをかけて,重大災害にならないようにする努力がなされている。
しかし,当然ながらハード対策だけでは事故防止を達成するのは現実的ではなく,ソフト対策を適切に組み合わせて安全対策を実施しているが,事故はなくならないので,各企業や事業所はソフト対策を如何に実施すべきかで腐心しておられるように見受けられる。
最近では,ISO取得や認定事業所のように,安全を担保するための仕組み作りが我が国にも定着しつつある。この仕組みはハード,ソフト両面から構築されるが,その運用が適切に行われないことによって事故が発生している。仕組みと運用については,そのバランス,整合性,持続性が重要である。立派な仕組みができると,それだけで安心して運用面に目が届かなかったり,せっかく立派な仕組みがあってもこれを運用する人が仕組みの本質や構造をよく理解しないために適切な運用ができなかったり,長い間に仕組みが変質することによって運用と整合性が悪くなったり,あるいは仕組みを運用する人の世代交代のときの伝承が悪いなどのために事故が発生している。
今後とも,安全の担保の仕組み作りが重要視されるようになると考えられるので,その運用面の配慮を怠らないようにすることが重要と考える。