セーフティー・はーと

第106号 事故再発防止のためのプロセス安全管理

島田行恭 <労働安全衛生総合研究所>
前回84号にて「同じ事故を繰り返さないために」と題して,安全管理に関わる研究を行っている者としての思いを書きました。
でも,相変わらず類似の事故は繰り返されています。会誌「安全工学」の最新号(Vol.46,No.2)の中で西川氏は「事故調査報告書の多くは,物質や設備などのモノの部分に当てられ,その根本に隠れているヒト(人間とその管理)に関することまで掘り下げられていない」と述べられています。

先日も「粉じん爆発」がありました。粉じん爆発に関する事故は毎年,何件も発生しており,その度にどうしてそのような事故が起こったのか,詳細な原因の推定(現象の解明)が繰り返されています。もちろん原因解析は大事なことなのですが,もっと大事なことはやはり再発を防止するにはどうしたらよいのか?ということをしっかりと検討するべきでしょう。多くの先輩方が事故調査においても「プロセス設計,建設から運転,保全,廃棄に至るプラントライフサイクルに渡るエンジニアリング業務全体の安全管理の問題と,それに関わる人の教育,コンプライアンス問題,外部への説明などの問題にも踏み込んだ再発防止策まで検討することが重要である」と説いています。

同誌Vol.46,No.1の『安全への提言』の中で東工大の仲教授が説明されていますが,プロセス安全管理(PSM)システムは,プロセス産業におけるライフサイクルエンジニアリング全体を安全の観点から管理する仕組みです。事故の原因調査においても,調査を行う人の得意な視点からだけでなく,幅広く,再発防止策を考えるきっかけを作ることができるようなPSMの枠組みに沿った問題点の分析を行うことが重要でしょう。

一般に化学プロセスの安全管理問題は物質(反応プロセス)の安全管理とプロセスプラントの安全管理に分けて議論されています。化学プラントの安全管理に関する研究を行っている方々はどちらか一方の立場を取っているのではないでしょうか。よく言われる物質屋さんとプロセスシステム屋さん。お互いのノウハウをつなぎ合わせ,統合化されたPSMの環境を構築することが今の研究目的です。というのは壮大なテーマ過ぎるでしょうか・・・。