セーフティー・はーと

第4号 セーフティー・はーとによせて

(2001年8月22日  西郷  武 )
昭和30年頃 横浜国立大学教授 北川徹三先生が安全工学の重要性を世に問うて すでに四十数年が経過した。
当時、わが国では戦後初めて石油精製工場の運転が再開され、石油化学工場の操業も始まり、これらの工場で発生する爆発・火災の防止・軽減のために安全工学が必要であった。発足当初は化学安全工学であったと思われる。その後高度成長時代に入り、自動車事故による死亡者の増加、大量生産大量消費による廃棄物の問題、大気汚染による公害問題が発生し始め安全工学の検討課題も広がった。最近生じた航空機の墜落事故、原子力発電所の関連事故、医療事故、ダイオキシンの問題などは一般市民にまで影響を及ぼし社会問題となっている。また、二酸化炭素の増加は地球全体の環境破壊につながり、従来のリスクとは質が異なる。安全工学誌上に安全文化に関する論文もみられるようになり、各種機関による安全の本質についてのシンポジウムが盛んに開かれている。安全学とか失敗学など安全に関する科学哲学の提案もみられる。各分野に共通した安全に関する学問体系の確立が望まれる。