セーフティー・はーと
第124号 化学事故と安全操業への経営者の責任
若倉 正英 2009年11月5日掲載
21世紀に入っても化学物質による大事故が発生し、
市民や事業所周辺の環境に甚大な影響を及ぼす事例も少なくありません。
21世紀に入っても化学物質による大事故が発生し、
市民や事業所周辺の環境に甚大な影響を及ぼす事例も少なくありません。
重大事故は機器故障や腐食劣化などの設備要因、人的過誤などが直接要因とされますが、その背後にある組織や人の意識の要因を掘り出すことが重要であるという認識が高まっています。特に、2005年に発生した英国石油の 米国Texas製油所、 英国 のBuncefieldの油槽所での事故はいずれも、経営者の利益優先に起因する運転員の質の低下が事故の要因となったと指摘されました。2008年にはイギリスでHSE(イギリス健康安全庁)主催の経営トップの在り方に関するセミナーが開かれました。また、OECD環境部門が策定した2009 - 2012年の化学安全に関する活動プログラムでは、化学事故防止に対する企業経営層の役割についての課題も含まれることになりました。これを受けて、第19回(2009年10月)の Working Group on Chemical Accidents (WGCA) で、本課題に関する分科会の設置が決定され、WG議長(ドイツ)から日本の参加が要請されています。
安全工学会でも産業の安全は経営者の姿勢によるところが大きいという認識から、トップマネージメントに関する安全教育セミナーを平成18・19年度に実施しました。現在この活動をさらに進めるための検討を行っています。会員各位のお知恵と協力を仰ぎながら、実効的な方向を模索していきたいと考えております。