セーフティー・はーと

第78号 人材育成

安田憲二 <岡山大学大学院>
平成15年8月に三重県で起きたごみ固形燃料(RDF)貯留サイトでの爆発・火災により,消防士2名が死亡し,作業員5名が重軽傷を負った事故は記憶に新しい。
日本廃棄物処理施設技術管理者協議会による事故事例調査結果によると,平成8年から11年までの4年間に廃棄物処理施設で生じた事故数は700件を超えており,化学工場などでの事故発生頻度である10-4から10-5に比べて異常に多い。また,廃棄物処理施設は最近の事故率が特に著しいなど,由々しき状況になっている。

私は,10年ほど前に1名が死亡,2名が重軽傷を負った一般廃棄物焼却炉での爆発事故について原因調査を担当した。調査の過程で,過去に同じ施設で予兆となる類似の事故があったこと,新聞報道などでも他の施設における爆発事故が報じられていたにもかかわらず,施設を供給する側,管理する側の両方とも全く関心を持っていなかったことが明らかになった。このような状況は現在も変わっておらず,少なからず事故がなくならない原因にもなっていると思われる。

産業廃棄物では,収集・運搬や中間処理などを事業として始めるためには業の許可を取得する必要がある。許可を得る条件として必要な講習を受講し,試験に受かったことを証明する書類の添付が義務付けられている。しかし,受講は現場担当者ではなく経営者サイドに義務付けられており,これまで講習会で使用するテキストには事故防止に関する記述はほとんどなかった。このため,廃棄物関係では事故防止にほとんど関心を持たず,知識の蓄積も図られてこなかった。

化学工場などでは,早くから事故防止に向けて担当部署を設置し,専門家の育成を図ってきた。その結果,事故の発生頻度はきわめて少なくなった。廃棄物関係においても,最近の事故の頻発に鑑み,早急に安全を担当する部署の設置と,必要な人材の育成に向けた取り組みを始めるべきではないか。さらに,廃棄物の業の許可を得る条件として,事故防止を担当する専門職の常駐を義務付けるのも,事故防止に有効であると思う。一考を要するのではないか。