セーフティー・はーと

第35号 安全文化とは?

福田 隆文  <横浜国立大学> 
安全文化という言葉を聞くようになって久しい。意味もわかるような気がするし,「安全文化」の大切さもわかったつもりでいた。ところが,よくよく,これはどのような意味だろうか,と考えると,「文化」という言葉に引っかかった。
手元に辞書によると,『3.(Culture)人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容を含む』(広辞苑)『3[U,C] particular form of intellectual expression, eg in art and literature  4[U,C] customs, arts, social institutions, etc of a particular group or people』(Oxford Advanced Learner's Dictionary)と説明されている。どうやら,特定の(ある)やり方で行って,その結果,成果があることが,「文化」の定義らしい。安全を考えましょう,はいまや各国で普遍の事だろうから,これだけでは「文化」というには弱いように思う。「安全文化」というからには,日本独自の,あるいはその企業独自のやり方で成果を示していることが要るようで,「安全について配慮しています」とか,「従業員に安全を考えてもらっています」から進んで,具体的に安全を確保するやり方を示すことが肝心のように思った。そして,それが従業員に根付いてその企業の誰もがそのやり方を用いるようになると,その会社の安全文化ができあがることになるのだと思った。
 文化という言葉には,漠とした感じを持っていたが,実は具体的なものだという事がわかった次第である。そのやり方が企業で当たり前のことになるのには時間がかかる。つまり,文化熟成に時間がかかることもわかった。