セーフティー・はーと

第60号

フェロー 飯塚義明   <㈱三菱化学科学技術研究センター>
私事で恐縮ですが,昨年3月に環境安全工学研究所の所長職を退任し、6月には、定年退職を迎えました。引き続き、研究組織が独立した研究センターに勤務をしています。
三菱化成工業㈱の時代からほぼ30年間安全に関する研究やおよび製造現場への安全支援を行って着ました。年間生産量が何十万トンというプラントと50kgが商業レベルというプラントまで幅広く体験できたことは、安全をライフワークとするに貴重な経験でした。ここ数年は、製品安全という分野に手を染め、現在も小さいながら特定分野の安全性評価を研究するプロジェクトを運営しております。「製品安全」と「製造安全」と異なる点は、安全意識そのものにあるようです。例えば、一般大衆に近い製品で、使用者に被害を加えるイベントの発生は、その製品の存在(売れ行きの低下)が脅かされる。そのため、あらゆる最悪ケースを想定した評価を必要とされる。一方、製造は必要悪と言うと言い過ぎなるかも知れませんが、致命的な事故が発生しない限り、根本的な改善を施さないままずるずると生産活動を続ける。生産の周囲もそれを認める風潮があり、日本代表をするような企業が、その典型例をおこしている。「製品安全」という世界からもの作りの世界を見たとき、そのギャップは、なんとも表現しがたい。生産技術に国家間の差が無くっている昨今、日本のもの作りは、製品安全レベルの安全意識で取り組んでいって欲しいものです。