セーフティー・はーと

第59号 今こそ自主管理の徹底を

西 茂太郎
2004年の新年が明けました。今年こそ良い年にしたいと誰もが思っておられることと思います。それにしても昨年は安全に携わる者にとっては色々と苦難の一年であったと思います。
何故事故が立て続けに起こるのか?共通した原因があるのではないかと。事故を起こした側の社会的責任は当然であり、厳しく問われてしかるべきと思いますが、長期的な視野に立った場合、今こそ自主管理を徹底すべきだと思います。
 安全確保のために日本では、「Zero Event Tolerance(事故はゼロでなければならない)」、欧米では「ALARP(as low as reasonably practicable:合理的に実行できる中で可能な限り少なくする)」というコンセプトです。
「Zero Event Tolerance」コンセプトの強制の弊害は、規制と基準のありように表れています。日本と欧米の法律の明らかな違いの一つはその規定の仕方で、欧米の規制は「ゴール志向」であり、日本ではほとんどがゴール志向ではなく、微に入り細に入り規定しています。このことは行政機関にとっては法律遵守状況のチェックに容易である反面、産業界を知らず知らずのうちに、法的責任ばかり負わせられる自由度のないリスク管理に追いこんでしまっています。企業が独自にリスク管理することを結果として行政が邪魔しています。しかし結局、日本の企業は行政が敷いた事故防止の路線を歩むしかない状況に陥っているのが実態ではないでしょうか。
 これから脱却するための取り組みがいくつかなされつつありますが、事故が発生したら新たな規制強化という今までのパターンから脱却し、中途半端な自主管理から徹底した自主管理へ移行しなければ真の安全確保は達成できないと考えます。