セーフティー・はーと

第102号 安全第一主義 というけれど

若倉正英 <神奈川県産業技術センター>
しばらく間があきましたがセーフティーハートを再開させていただくことになりました。
セーフティーハートは安全工学会の活動を積極的に支える様々な分野の専門家が,“安全・環境問題”にその専門性を基にコメントしていく場です。ご一読いただき,そのコメントに対して皆様からのご意見をいただければ幸いです。

この1年近くのインターバルの間に様々な産業事故,製品事故,偽装問題,コンプライアンス問題などが起きてきました。特に,ガス湯沸かし器の事故では,多くの人命が失われていたことが明らかになりました。企業のトップが従業員,消費者いずれもの命の重さを第一に考えるべきなのですが,安全とは空気のようなものだという思いもします。普段はその存在を全く気にしていないのに,なくなってみると実は大変な思いをするのです。企業の安全部門の方から時折耳にする言葉があります。“上の人は安全第一って言うけれど,会社の中では利益に貢献する部署に比べると,安全環境部門の評価は低いんだよね”。病気になって初めて健康のありがたさを知る,というのと同じで安全は当たり前のことと思われすぎていて,それを維持するために知恵や努力がいることが忘れられているのではないでしょうか。

安全工学会では産業分野の安全に寄与するため,「ヒヤリハットや事故情報を活用して,現場の安全性を向上させるための研究開発(石油産業活性化センター;安全基盤整備事業)」,「産業保安分野における安全文化の向上に関する調査・検討(原子力安全・保安院;原子力発電施設等社会安全高度化事業)などの活動を行っています。これらの事業の直接の目的はプロセス産業を中心とする製造産業の安全ですが,様々な分野に利用可能です。多様な安全専門家が活躍する安全工学会の特長を生かして,得られた成果を広く活用していきたいと考えております。