セーフティー・はーと

第57号 CSRに思う

天野 由夫 <出光興産 安全環境室>
最近、CSR(Corporate Social Responsibility)という言葉を耳にする機会が多くなって来ている。CSRは簡単に言うと企業の社会的責任であり、企業が社会の一員として持続的に事業を展開するため果たすべき責任のことである。
CSRが求めているのは、単に、法律を守っているだけでなく、最近はこれも守らず問題になっているケースもあるが、企業の倫理規範の遵守、公正な企業活動、社会貢献等がある。欧米では、この動きが顕著となってきている。日本も近い将来、消費者や投資家はこのようなCSRを尺度として企業を峻別する時代が来ると考えられる。その中でも、CSRではステークホルダー(利害関係者)に対する説明責任を果たすこと要求している。CSRの中には当然、環境や安全の分野も含まれている。安全の場合で言えば、企業の安全確保に対する努力や姿勢を利害関係者に普段から説明することが必要である。不幸にも事故が発生した場合も同様、ステークホルダーは誰で、どのような内容、手段等によって、説明責任を果たすのか、考えなければならない。過去、往々にして、安全の説明では、安全上の問題点を明示することなく、しっかりやっているとか、安全に対しては最大限の努力を傾けているという姿勢論の説明が多くなされてきた。CSR等を考えると、安全の説明責任を果たすためには、今後、あまり積極的に公表してこなかった安全上の問題を明確に示し、そのため、このような安全確保の努力を行っているという説明が必要となって来るのではないかと思う。ステークホルダーを明確にし、納得させるような説明を普段から準備することが今後、大切になってくると思う。

以 上