セーフティー・はーと

第47号 企業倫理

大島 榮次
この所、矢継ぎ早に企業の反社会的な行為に関するニュースが報道されており、高圧ガス設備の認定検査制度でも、実際に検査をしていないにもかかわらず適当な数値を書いて県に虚偽の報告書を提出するという法律違反が発覚した。
 東京電力で起きた違反行為と殆ど同じ構造の事件である。 法律で決められている検査周期は頻繁過ぎるので、明らかに安全性には関係がないという技術的な常識を法律に優先させてしまった行為である。 従来、法定検査は県の立会の下で行われて来たが、検査項目も多くすべての検査に立ち会うことが出来ないので、充分信頼するに足る検査が行われていることを確認する程度に留まってしおり、日程調整などで検査の能率にも影響があるということから、高圧ガス保安法に基づく認定制度では自主的に事業所の社員が県に代わって立会、監査をすることが出来るようになったものである。 しかし、事業所の認識としては、検査管理組織とは検査を管理する内部監査的な機能であるとしか理解していない節が見られる。 今回の事件に関しては、実際には釈明とは程遠いものであったにせよ、会社の責任者の説明と謝罪は表明されたが、本来はそれとは別に検査管理組織の責任者から何故不正行為を阻止することが出来なかったかの説明が行われるべきである。 それは、検査管理組織の担当は事業所長が任命するが、彼らは社会から負託された法の番人であるからなのである。 現行の認定制度では簡単に違法行為が可能であるということを事業所自らが証明したとすら思える今回のスキャンダルを見るにつけ、検査管理組織に携わる者の資格として単なる経験年数だけではなく、保安に対する考え方、そして何より企業倫理に関して強い責任感を持っているいることを確認する具体的な手続きが必要ではないかと考えている。